ナ シ 海 外 輸 出 実 証 試 験 ( 第 2 報 )
徳 田 正 樹
*・ 廣 瀬 正 純
*・ 川 口 和 晃
**・ 小 笠 原 温
***・ 椎 名 武 夫
****食 品 産 業 担 当 *
神 栄 テ ク ノ ロ ジ ー ( 株 ) ・ 日 本 電 気 ( 株 ) ・ ( 独 ) 農 業 ・ 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 食 品 総 合 研 究 所
** *** ****
Overseas Transport Test of Japanese Pear
(
2nd Report
)
Masaki TOKUDA
*・
Masazumi HIROSE
*Kazuaki KAWAGUCHI**
・
Atsushi OGASAWARA***・
Takeo SHIINA**** Food Industry Division*
SHINYEI TECHNOLOGY Co.,Ltd・ NEC Corporation・ National Food Research Institute
** *** ****
要
旨
日 田 ナ シ の 海 外 輸 出 時 の 輸 送 技 術 の 改 善 を 図 る た め ,18年 度 に 続 き さ ら に 詳 細 な 輸 送 中 の 環 境 要 因 を 調 査
す る 実 証 試 験 を 行 っ た . 実 証 試 験 は , 神 栄 テ ク ノ ロ ジ ー ( 株 ) , 日 本 電 気 ( 株 ) , ( 独 ) 農 業 ・ 食 品 産 業 技 術 総 合 研
究 機 構 食 品 総 合 研 究 所 と の 共 同 で 実 施 し た . 輸 送 中 の 振 動 に 加 え て , ト ラ ッ ク の 積 み 替 え や 海 上 輸 送 用 コ ン テ
ナ へ の 積 み 込 み な ど の ポ イ ン ト で 大 き な 衝 撃 値 , 並 び に , 温 湿 度 の 変 化 が 確 認 で き た . 温 度 は , 博 多 港 の コ ン
テ ナ ヤ ー ド 搬 入 後5℃ 前 後 と な り , そ の 後 , 台 湾 ま で5℃ 以 下 に 管 理 さ れ て い た . 湿 度 は , 昨 年 度 の よ う に 輸
送 中100% と な る こ と は な か っ た . 振 動 加 速 度 は , 貨 物 上 段 よ り 下 段 で 閾 値 を 超 え る 回 数 が 多 く , 最 大 加 速 度
値 も 大 き か っ た .PSDは , 上 段 で 低 周 波 数 域 の 成 分 が 大 き く , 下 段 で 高 周 波 数 域 の 成 分 が 大 き か っ た . ま た ,
上 段 と 下 段 の 振 動 伝 達 率 (PSDの 比 ) を 見 る と , 周 波 数7Hz付 近 で は 下 段 の10倍 以 上 ,25Hz以 上 で は1以 下
で あ っ た . 海 上 輸 送 時 のPSDは , 超 低 周 波 数 域 (0.5Hz以 下 ) の 成 分 が 大 き か っ た . ま た ,18年 度 と 比 較 し て ,
今 回 の 輸 送 振 動 レ ベ ル (Grms) が 大 き く な っ て い た が , 貨 物 に 損 傷 を 及 ぼ す よ う な も の で は な か っ た .
1.
は じ め に
大分県では,平成16年 から「ブランドおおいた輸出
促進協議会」が中心となって県産農産物の輸出促進活動
を行っている.中でも,日田ナシについては活発な販売
促進活動により,輸出量は平成16年40t ,17年40t ,
18年127t ,19年158t と順調に伸びてきた.
海外輸出は国内輸送とは輸送手段,輸送環境や輸送時
間が大きく異なるにもかかわらず,産地では現行の技術
で対応しているのが現状であり,そのため農産物に障害
が発生することもある.
そこで,昨年度,日田ナシの海外輸出時の輸送技術の
改善を図ることを目的とし,実際の輸送中の環境を調査
する実証試験を行った.その結果,輸送中の振動に加え
て,トラックの積み替えや海上輸送用コンテナ(以下コ
ンテナ)への積み込み時に大きな衝撃値,並びに,温湿
度の変化を確認することができた.また,海上輸送中の
温度は非常に良く管理されているが,梨選果場から博多
港までは常温で輸送されているため,条件によっては輸
送途中およびコンテナによる低温管理の際に結露が発生
し,段ボール強度の低下を招く恐れがあることもわかっ
た.衝撃については,博多港での船積み時に大きな衝撃
を検知した.海上輸送時のPSD波 形から,低周波数域
のPSD値 が大きく,高い周波数の振動はほとんど含ま
れてないことがわかった.トラック輸送時のPSDと 比
較すると,周波数の低い振幅の大きな振動であることが
わかったが,荷物に損傷を及ぼすような振動ではなく,
着荷状態にも問題はなかった.
今回の実証試験では,特に衝撃事象と振動事象につい
て詳細な調査を行った.なお,今回の実証試験も,昨年
度に引き続き,神栄テクノロジー( 株) ,日本電気( 株) ,
( 独) 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所と
の共同で実施した.
2.
実 験 方 法
2. 1 供試材料
JA大 分ひたから台湾へ輸出された日田ナシ(新高)
の5kg箱2ケ ースに輸送環境測定装置を設置し,重量を
5kgに 調整し,ダミー貨物とした.
2. 2 輸送経路および実施時期
大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告
JA大 分ひた梨選果場(以下選果場)から博多港まで
はトラック輸送,博多港から基隆港(台湾)まではコン
テナ船,基隆港から現地商社倉庫(台北市内)まではト
ラック輸送であった.なお,装置は9月24日 に選果場
で取付け,10月3日 に基隆港に着岸,そのまま保税倉
庫内で保管された後,10月20日 に台北市内の商社倉庫
にて回収した.
2. 3 設置機器および測定条件
パレット上の貨物(13段 積み)の上段(12段 目)に
配置したダミー貨物には,輸送環境記録計(DER-mini,
神栄テクノロジー製)2台,DER-SMART( 神栄テクノ
機器設置状況(上段) 機器設置状況(下段)
ダミー貨物(上段)
ダミー貨物(下段)
F ig.1 機器設置状況
ロジー製)1台 ,センサタグ(NEC/TDK製 )2個を設置
し,下段(1段 目)に配置したダミー貨物には,
DER-miniを1台 ,DER-SMARTを1台 ,センサタグを2個 ,
それぞれ設置した.(Fig.1)
輸送環境記録計の測定条件はTable 1に 示 した.上段
ダミー貨物からは衝撃事象,下段ダミー貨物からは振動
事象を計測することを目的に条件を設定した.なお,計
測モードの括弧内の数値は,加速度波形を記録するため
の閾値を表している.
3.
試 験 結 果 お よ び 考 察
3. 1 実証試験の概要および着荷状況
選果場にて光センサーによる選果,箱詰め後,トラッ
クにより博多港まで輸送された.博多港にて検疫を受け
た後,冷蔵コンテナ内に搬入され,コンテナ船にて基隆
港(台湾)まで輸送された.基隆港にて検疫を受けた後,
保税倉庫内で保管後,トラックで台北市内の商社倉庫ま
で輸送された.
着荷時,箱のつぶれや損傷はほとんど見られず,良好
な状態であった.箱内のナシにも輸送中の損傷は見られ
ず,良好な状態であった.
3. 2 輸送中の温度・湿度・衝撃・振動の状況
輸送中の加速度と温湿度をFig.2に 示した.また,タ
イムスケジュールをTable 2に 示 した.
箱内温度は,選果場から博多港のコンテナヤードに搬
入されるまでは20∼25℃ 程度で推移した.コンテナヤ
ードに搬入後,温度が下がり始め,5℃前後となった.
その後,台湾まで5℃以下に管理されていた.
測定項目 計測イ ン ター ハ ゙ル / テ ゙ッドタイ ム トリカ ゙レ ヘ ゙ル サ ン フ ゚リン ク ゙周期周波数範囲 テ ゙ー タフ レ ー ム DE R- mini(10G) 衝撃 1秒 1G 2ms 0.5∼125Hz 1024 DE R- mini(50G) 衝撃 1秒 3G 2ms 0.5∼125Hz 1024 DE R - S MAR T (50G) 振動・温湿度 1秒 3G 1ms 1∼125Hz 1024 DE R- mini(10G) 衝撃 1秒 1G 2ms 0.5∼125Hz 1024 DE R - S MAR T (10G) 振動・温湿度 120秒 タ イ ム トリカ ゙ー 5ms 0.1∼50Hz 2048 上段
下段
T able 1 輸送環境記録計の測定条件
Table 2 輸送中のタイムスケジュール タイムスケジュール
● 2007年9月24日 PM12:00 ロガー取り付け(計測開始) ● 2007年9月25日 AM5:00頃 J A大分ひた発(トラック) ● 2007年9月26日 博多港検疫、通関
● 2007年10月1日 AM7:30 博多港着岸 ● 2007年10月1日 PM12:15 博多港出港 ● 2007年10月3日 AM8:00 基隆港着岸 ● 2007年10月20日 現地商社着
0 2 4 6 8 10 12 14
9 月2 3日 9月 25 日 9 月2 7日 9 月2 9日 10 月1 日 1 0月3 日 10 月5日 1 0月 7日 10 月9 日 10 月11 日
加速
度(
G
)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
温湿度
S MA R T 50G- 上 mini10G- 上 mini50G- 上 温度 湿度
F ig.2
輸送中の加速度と
温湿度
大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告
箱内湿度は,トラックの積み替えやコンテナへの積み
込みなどのポイントで変化が見られたが,昨年度のよう
に湿度が100% となることはなかった.
輸送中の振動加速度を測定した結果,トラック積み替
えやコンテナ積み込みなどのポイントにおいて大きな衝
撃値が発生していた.昨年同様,荷役作業中に衝撃が発
生したものと考えられ,荷扱いについて注意を促す必要
がある.
設置した5台 の輸送環境記録計の設定条件とデータを
Table 3に 示した.また,上下段での上下方向の加速度
波形の例をFig.3,4に 示した.DER-mini(10G) のデータか
ら,上段より下段の計測回数が多く,最大加速度値も大
きいことがわかった.これは,下段ではパレットの振動
が直接貨物に伝わるため,上段に比べ、高周波数域の成
分が多く含まれている短く高い加速度の振動が発生する
ためであると考えられる.DER-SMART(50G) ,
DER-mini(50G) では,3デ ータしか計測されていなかった.
これは,上記の理由により高周波数域の成分が減衰され
ることによる加速度値の低減と,設定した閾値(3G) が
高すぎたことが原因であると考えられる.
DER-mini(10G) で得られた加速度波形をパワースペク
- 3 - 2 - 1 0 1 2 3
0 0.5 1 1.5 2
時間(s)
加速
度
(
G
)
上段- 上下
F ig.3
上段上下方向加速度波形の例
- 8 - 6 - 4 - 2 0 2 4 6 8
0 0 .5 1 1 .5 2
時間(s)
加速
度
(
G
)
下段- 上下
F ig.4
下段上下方向加速度波形の例
位 置 機 器 最大加速度(G) 計測データ数(個)計測モード
DE R - mini 10G 7.96 65 加速度(1G) DE R - mini 50G 9.43 3 加速度(3G) DE R - S MAR T 50G 7 3 加速度(3G)
DE R - mini 10G range over 202 加速度(1G) DE R - S MAR T 10G 2.8 5000 時間 上 段
下 段
T able 3 記録計の設定条件と各種計測データ
トル密度(Power Spectrum Density, 以 下PSD) 解析した
結果をFig.5に 示 した.上段で低周波数域の成分が大き
く,下段で高周波数域の成分が大きいことがわかった.
また,上段PSDの 下段PSDに 対する比によって求めた
振動伝達率を見ると,周波数7Hz付 近 では下段の10倍
以上,25Hz以 上では1以 下であった.これは,上段の
貨物はその下にある貨物が緩衝材となって,高周波数域
の成分が減衰される代わりに,多段積載段ボール箱の共
振帯域で下段よりも上段で大きな振動が発生するためと
考えられる.このことは,貨物単体での振動試験に合格
したとしても,実輸送時でのコンテナ内の位置により,
試験では再現できなかった破損が発生する可能性がある
ことを示唆している.
海上輸送時のPSDをFig.6に 示した.超低周波数域
(0.5Hz以 下 ) の成分が大きいことがわかった.また,今
回の輸送振動レベル(Grms) と前回の数値を比較した結
果を Table 4に 示した.前回と比較して,今回のGrms
が大きくなっていたが,貨物に損傷を及ぼすようなもの
ではなかった.以上の結果から,海上輸送の場合は,振
1.E- 06 1.E- 05 1.E- 04 1.E- 03 1.E- 02 1.E- 01 1.E+00
0.1 1 10 100 1000
周 波数 (Hz)
P S D 0 2 4 6 8 10 12
伝達
率
上段 下段 伝達 率
F ig.5
PS Dと
振動伝達率
1 .E- 07 1 .E- 06 1 .E- 05 1 .E- 04 1 .E- 03 1 .E- 02 1 .E- 01 1 .E+ 00
0 .1 1 1 0 1 00
周波 数(Hz )
P S D ( G ^ 2 / H z )
上下
左右
前後
F ig.6
海上輸送時のPS D
方
向
Grms(
G)
今回
Grms(G) 前回
上
下
0.019
0.008
左
右
0.015
0.01
前
後
0.018
0.07
T able 4
輸送振動レベルの比較
大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告
動よりも荷扱いによる衝撃や温度管理が重要であること
がわかった.
今後,調査を重ねることで,輸送環境をさらに詳細に
解析することが可能になり,輸送技術の改善につながる
ものと考える.
4.
ま と め
日田ナシの海外輸出時の輸送技術の改善を図るために,
輸送環境を詳細に解析するための輸出試験を実施した.
本研究により得られた知見は以下のとおりである.
(1) 着荷時に,箱のつぶれや損傷はほとんど見られず,
良好な状態であった.箱内のナシにも輸送による損傷
は見られず,良好な状態であった.
(2) 輸送中の箱内温度は,梨選果場から博多港のコンテ
ナヤードに搬入されるまでは20∼25℃ 程度で推移
した.コンテナヤードに搬入後,温度が下がり始め,
5℃前後となった.その後,台湾まで5℃ 以下に管
理されていた.
(3) 箱内湿度は,トラックの積み替えやコンテナへの積
み込みなどのポイントで変化が見られたが,昨年度の
ように湿度が100% となることはなかった.
(4) 輸送中の振動加速度を測定した結果,トラック積み
替えやコンテナ積み込みなどのポイントにおいて大き
な衝撃値が発生していた.
(5) 貨物上段より下段で閾値を超える振動回数が多く,
最大加速度値も大きいことがわかった.
(6)PSDは ,上段で低周波数域の成分が大きく,下段で
高周波数域の成分が大きいことがわかった.また,上
段と下段の振動伝達率を見ると,周波数7Hz付 近で
は下段の 10倍以上,25Hz以 上では1以下であった.
(7) 海上輸送時のPSDは ,超低周波数域(0.5Hz以 下) の
成分が大きいことがわかった.また,前回と比較して,
今回のGrmsが 大 きくなっていたが,貨物に損傷を
及ぼすようなものではなかった.
なお,本試験を実施するにあたり,大分ひた農業協同
組合,全国農業協同組合連合会大分県本部,日本園芸農
業協同組合,大分県西部振興局生産流通部の関係各位に
は多大なご協力を頂きました.ここに厚く御礼申し上げ
ます.
大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告